小・中学生向けの霧箱の紹介です
線源なしで放射線がバンバン見える不思議!
F研客員研究員 林 熙崇
霧箱全体図
霧箱断面図
宇宙線が見える高性能の霧箱をペットボトル等の安いプラスチック容器で作ります。一般に宇宙線やβ線は電離作用が弱く、霧箱内で素粒子がつくるイオンの数が少ないため、α線のように簡単には見えません。しかし霧箱の底をエタノールのプールにする、常識と異なった工夫によって安定した高感度の霧箱を作ることが出来ました。この霧箱は放射線源を入れないのに、放射線が見えるのです。空から、周囲から降り注ぐ宇宙線やβ線が観察できます。今まで見たことが無い世界が広がります。生徒の認識が変わります。さらに大型の(5cm以上の直径)ネオジム磁石を霧箱底部にセットするとローレンツ力で曲がるβ線が観察できます。
霧箱組み立て図
脱脂綿リングの作り方
(1)組み立て方法
1) 霧箱の底を作る
プラスチック容器を逆さに置き、(容器の底はすでに取り去っている)その上に植毛紙をかぶせて、さらにその上からラップをかぶせて、植毛紙が平らになるように引っ張り、ゴムバンドで固定する。さらにその上からアルミホイルをかぶせてゴムバンドで固定する。
2) 容器の内壁を黒紙(つや消し)で覆う
3) 容器上部内側にエタノールをたっぷり含ませた脱脂綿リングをセットする。
4) 霧箱内にエタノールを植毛紙から3~5mmの深さになるまで入れる。(濡れると底が浮き上がってくるので少し多めに入れる)
5) 霧箱の上部にラップをかぶせて(しわがよらないように引っ張りながら)ゴムバンドで固定する。
6) 霧箱をドライアイスの上に載せて、ドライアイス、霧箱下部全体を断熱材(新聞紙、プチプチ等)で包んで、ゴムバンドで上部を固定する。
7) 断熱材でくるんだ霧箱を発泡スチロールの上に載せて10分ほど待つ。霧箱の下方に過飽和領域ができ、飛跡ができてくる。
(2)宇宙線、β線の観察
1) 高輝度LED懐中電灯のビームを斜め上方から上部ラップを通して照射して、霧箱の底面付近を照らす。ライトの光の中に宇宙線やβ線の飛跡が浮き上がってくっきりと見えてくる。(照明光の当たり方で飛跡の見え方が大きく変わる。照射方向をいろいろ工夫してみるとよい)
2) 観察は懐中電灯側からおこなう。(反対側からでは飛跡は見えない)
(3)材料の入手方法
1) ドライアイスは都市では、ドライアイスの卸やで購入するのが便利です。ちなみにF研では急に必要なときは、名古屋のタカギ産業KK(TEL 052-331-6551)を利用しています。この店は日曜日も営業していて利用できるので便利です。また、葬儀屋は日本中にあり、常にドライアイスを必要としているので、無理を言えば入手できると思われます。
2) エタノールは98%以上の純度のものが必要です。消毒用アルコールとして市販されているものは水入りなので、-50℃になると霧箱底面の液が凍結して白いバックになり、飛跡が見えなくなります。エタノールは薬局に頼んでおけば難しい手続き無しで入手できます。