我々の研究室の持つ武器は、原子核乾板に写っている飛跡を超高速で読み取る装置(Track Selector,TS)、およびその運用技術です。1972 年に丹羽(現名誉教授)が飛跡認識原理の構想・提案をし、中野(現助教)がそれを現実のものとしました。1994 年のCHORUS実験、1997 年DONUT実験、そして2005年のOPERA実験と新たな実験を行うごとに、その読み取り速度は飛躍的に向上しています。この技術革新は2011年現在でも留まることを知りません。
初代自動飛跡読み取り装置(1985年)
初めて実戦投入された初代自動飛跡読み取り装置。Fermilab E653 実験に おいて使用されました。ですが性能は十分とは言えず、全てのスキャナー にとって代わるまでには至らず、サポートに留まっていました。
TS(Track Selector)(1994年)
CERN WA95 通称CHORUS実験において初めて人間のスキャナーに 取って代わり、絶大な威力を発揮した最初のモデルです。ここから 真の全自動解析が行われる様になりました。
NTS(New Track Selector)(1996年)
1996年に投入された次世代のトラックセレクターで主にCHORUS実験で用いられました。1997年から1998年始めにはタウニュートリノ直接観測実験DONUTの解析も始まりました。CHORUSにおいては解析の高速化に大きく 貢献しましたが、DONUT実験の解析において新たに開発された解析手法NetScan にとっては十分な性能とは言えず、次世代のトラックセレクターの開発が 不可欠でした。
UTS(Ultra Track Selector)(1998年)
DONUT実験において待ちに待たれた高速トラックセレクターです。このトラックセレクター無くしてDONUT実験の成功は有り得なかったと いっても過言ではありません。またUTSの登場により新解析手法NetScanも 飛躍的な発展を遂げ、原子核乾板解析の新たなページを開いた瞬間でも 有りました。NetScanは高速な全自動飛跡読み取り装置により原子核乾板中の 全ての飛跡を読み出し、オフライン作業により全体の飛跡の再構成を行います。実際CHORUS実験においても名古屋大学で読み出された 飛跡データをもとに、共同研究者であるスイス、イタリアと言った遠隔地での 原子核乾板の解析を可能にしたことは非常に大きな一歩でした。