F研では、長基線ニュートリノ振動実験OPERAを遂行し、タウニュートリノ出現を発見、ニュートリノ振動現象の最終検証に成功しました。今後のニュートリノ振動研究は精密測定によって”ニュートリノにおける粒子・反粒子のCP対称性の破れの探索”が主要なテーマとなります。この研究にはニュートリノ反応自身のこれまで以上の詳細な理解が不可欠となるため、サブミクロンという究極の位置分解能を誇る原子核乾板を用いて、ニュートリノ反応の精密測定実験を行っています。
“粒子”には、質量・寿命は等しく、電荷が反対である”反粒子”が存在しています。ビッグバンによる宇宙開闢時には、粒子と反粒子がこの宇宙に同数生成したと考えられていますが、現在の宇宙は、物質(粒子)で構成されており、反物質(反粒子)はほとんど無くなっています。この鍵を握ると考えられているのが、ニュートリノとその反粒子である反ニュートリノにおける”CP対称性の破れ”(素粒子反応の性質が非対称)です。ニュートリノ振動を超精密に測定すると、この効果が発見できるかもしれません。
私達は、ニュートリノ振動現象の精密測定に必須となる、ニュートリノ反応断面積の精密測定を目的としたNINJA実験をJ-PARCの大強度加速器ニュートリノビームを用いて推進しています。検出器に原子核乾板を用いることで従来のニュートリノ反応研究における検出器よりも100倍以上精密な測定データが取得出来ます。
NINJA実験で得られる100MeV〜数GeVのエネルギー帯のニュートリノ反応を用いることで、将来的には、LSND実験, MiniBooNE実験等で示唆されているステライルニュートリノの検証やチャーム粒子を含む原子核やチャームクォークを含むペンタクォークの探索といったエキゾチックな原子核・ハドロンの研究にも繋がる可能性があります。
(編集中)
共同研究機関
2017年4月現在
名古屋大学:理学研究科 F研 基本粒子研究室
京都大学:理学研究科 高エネルギー物理学研究室
神戸大学:発達科学部 人間発達環境学研究科 素粒子・宇宙線研究室
東京大学:理学系研究科 相原・横山研究室
東京大学:宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設
東邦大学:理学部物理学科 素粒子物理学教室
日本大学:生産工学部 教養・基礎科学系 三角研究室
横浜国立大学:工学研究院 南野研究室