長基線ニュートリノ振動実験OPERA

operalogo
Oscillation Project with Emulsion-tRacking Apparatus, CERN CNGS1
 

OPERAは、名古屋大学の牧・中川・坂田によって理論的に提唱されたニュートリノ振動を検証するため、またスーパーカミオカンデで観測されているニュートリノ欠損がニュートリノ振動(\nu_{\mu}\nu_{\tau})であるのかどうかを検証するために、名古屋大学 F研が中心となって立案し遂行している実験である。2011年8月現在、11ヶ国、30機関が参加する国際共同研究である。

CERNで作られた高純度の\muニュートリノを730キロメートル離れたイタリア、グランサッソまで飛行させ、その間に\tauニュートリノになっているかどうかを調べている。

OPERAはニュートリノ振動を\tauニュートリノの出現をもって観測する”appearance法”を用いる。\muニュートリノの減少量を測る”disappearance法”ではニュートリノの減少する理由として未知の物理過程を含めたすべての可能性を排除する必要があるのに対し、”appearance法”は振動した結果が何になったかを実験的に明確にする事ができる。

実際に\tauニュートリノを検出、同定する事は容易ではない。

それは、\tauニュートリノの反応で生じた飛程1ミリ程度の\tau粒子を捉える精密解析が必要である事とニュートリノは反応し難い為に解析反応数を稼ぐには大量の標的(質量)を用意する必要がある事を両立させないと実験は成功しないからである。

OPERAでは特殊な写真フィルムである原子核乾板を用いる事でこれらの条件をクリアしている。サブミクロンの位置精度を誇る原子核乾板が短寿命の\tau粒子を捉えることは、1998年に行った世界で初めて\nu_{\tau}の検出に成功したDONUT実験で実証している。

ニュートリノを捉える主検出器は、葉書大の原子核乾板(300ミクロン厚)57枚と鉛板(1mm厚)56枚とを交互にサンドイッチした構造(ECC、約8kg)であり、DONUTでも使用したECCを改良したものである。また、OPERAで使用している全原子核乾板は名古屋大学と富士フイルム社がこの実験の為に共同開発、製造したものである。大量の質量を稼ぐ為に15万個のECCを用意し総計1250トンの標的がCERNからのニュートリノを待ち構えている。

検出器で捕らえたニュートリノ反応の半分を名古屋大学を中心とした日本グループが解析している。毎週、現地グランサッソより送られてくる現像後の原子核乾板を、名古屋大学が開発、発展させてきた超高速飛跡読み取り装置をフル稼働させて解析している。

ニュートリノ照射は2008年から毎年行っており今年で5年目である。2010年6月にはOPERA初の\tauニュートリノ反応候補を検出し、2012年6月には2例目の反応候補を検出した。現在、日々、解析反応数を増やしてさらなる\tauニュートリノ反応の探索に全力で取り組んでいる。


OPERA実験で見つかった最初のタウニュートリノ反応候補

ニュートリノ振動とは
ニュートリノには電子ニュートリノ(\nu_{e})、ミューニュートリノ(\nu_{\mu})、タウニュートリノ(\nu_{\tau})の3種類(フレーバー)が存在する。ニュートリノ振動とはこれらのフレーバーのニュートリノが相互に化けあう現象である。ニュートリノに質量があって3種類のニュートリノで質量が異なると振動現象が起きることが導出される。フレーバー間のニュートリノ振動は1962 年,名古屋大学の牧・中川・坂田により初めて理論的に議論された。

その後現在に至るまで行われた、太陽ニュートリノ、大気ニュートリノ、加速器ニュートリノなどの測定実験が、検出されるニュートリノ数が予定より少ないこと(disappearance法)、減少の度合いがニュートリノ振動の理論によく合うことからこの理論を支持している。

これに対し我々はOPERA実験で、\nu_{\mu}\nu_{\tau}の出現をとらえることで(appearance法)ニュートリノ振動現象を直接検証する。

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共同研究機関

2011年9月現在

日本
名古屋大学理学研究科 F研 基本粒子研究室

東邦大学理学部物理学科・基礎物理学教室
神戸大学発達科学部 人間発達環境学研究科 素粒子・宇宙線研究室
愛知教育大学自然科学コース 宇宙・物質科学専攻・児玉研究室
宇都宮大学教育学部・理科教育研究室

ベルギー、クロアチア、フランス、ドイツ、イスラエル、イタリア、韓国、ロシア、スイス、トルコ

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List of contents

名古屋大学がOPERAの為に開発した技術 – リフレッシュ
名古屋大学がOPERAの為に開発した技術 – SUTS

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