素粒子標準理論の検証に関する日欧国際共同研究
プロジェクト概要
ニュートリノ族が質量を持つ事を示唆する実験から、素粒子標準理論を越えるものが見え始めた。 この11ヶ国、27大学・研究機関が参加する国際共同研究は、ニュートリノの質量問題に決着を付ける事を狙いにした「長基線ニュートリノ振動実験(OPERA実験)」を主要な内容としている。
1971年の丹生(当研究室創始者)等のエマルションを使った宇宙線によるチャーム粒子の発見、坂田、牧、中川のニュートリノ振動の理論等、実験・理論の両面の素粒子研究の伝統を持つ名古屋大学にあって、今回、「素粒子標準理論の検証に関する国際共同研究」を「新プロ」の補助を受けて推進できる事を誇りに思う。 ニュートリノが質量を持つことがハッキリすれば、宇宙のダークマターの解明にも大きなインパクトを与える事であろう。
OPERA実験

OPERA実験は、「素粒子標準理論の検証に関する日欧国際共同研究」の中核となる実験であり、2006年夏に本番を迎える。
スイスのジュネーブにあるCERN研究所の加速器でミューニュートリノビーム(約20GeV)を作り、730km離れたイタリアのGran Sasso地下研究所に向けてアペニン山脈の地中を貫通させる。 Gran Sasso地下研究所にタウニュートリノ検出器を設置し、ミューニュートリノが730kmを飛行する間にタウニュートリノに変化する現象(ニュートリノ振動)をとらえる。
OPERA 公式サイト
タウニュートリノの検出器
OPERA実験でタウニュートリノを検出するために、ECCと呼ばれるブロック状の検出器を使用する。これは、素粒子の飛跡を記録するフィルム(原子核乾板)と鉛板を組み合わせ真空パックしたもので、世界で初めてタウニュートリノの検出に成功したECCを改良したものである。

このECC検出器をGran Sasso研究所の地下実験室(巾15m、長さ100m)に20万個設置する。OPERA実験で使用するECCの重さは1800トンに上る。
OPERAフィルム
ECCに組み込まれる原子核乾板(OPERAフィルム)は、OPERA実験のために名古屋大学と富士写真フィルム社が共同開発したものである。
このフィルムは製造後、「リフレッシュ」という処理を行い、日本から船でイタリアまで輸送される。
ニュートリノ反応を記録したOPERAフィルムは、現地Gran Sassoで現像した後名古屋まで空輸される。そして名古屋大学F研究室にて、顕微鏡・CCDカメラ・並列コンピューターを組み合わせた原子核乾板全自動解析装置群で解析される。

ニュートリノ反応点で作られるタウ粒子の飛跡が検出されれば、「ミューニュートリノが途中でタウニュートリノに変化した」という証明になる。OPERA実験の中で、タウニュートリノ反応は1年に数例、5年間で20例程が検出される予定である。